業務プロセス改革のBPRと、DXとは似て非なるものですが、これによる期待効果や目的が同じケースもあります。
特にDXが、経済産業省が提唱したDXレポートに代表されるように、全社規模で取り組むべき課題という印象があるため、DXの縮小版がBPRだと勘違いされて解釈している人もいるようです。
全てを否定はできませんが、DXは決して基幹となるレガシーシステムを大々的に更改するようなケースのみを指すのではなく、システム規模に関係なく、スモールスタートで行うDXもあります。
たとえば、BPRの事例でよく出てくるハンコに依存していた押印業務を電子契約サービスに変更するという業務改革の例です。このケースでは、BPRらしく既存業務の否定から入り部分的な業務プロセスの改善ではなく、抜本的な業務プロセスの見直しから大胆にシステムを変更しているため、結果的にはDXの狙いと同じくITを活用してビジネスモデルまで変えてしまい、コスト削減、業務効率化で圧倒的なメリットを生み出しているため、DXのスモールスタート成功例としてもよく取りあげられています。
もともと、DXレポートで有名になった「2025年の崖」は、旧態依然として変革できないまま巨大化してしまったレガシーシステムに対し、DXを実施しなければ生き残れないというメッセージによってDXがクローズアップされてしまっていたわけですが、単にDXを利用してシステム更改することだけが目的ではなく、本来は「レガシー企業文化からの脱却」が必要です。
つまり、既存業務システムの問題点を改修する程度では、改修後は効果があっても、時間が経てばまたそれがレガシーシステムになってしまい、IT技術の進歩に臨機応変に対応し他社に打ち勝つビジネスモデルにはなりえません。やはりDXでも、"改善"のレベルでなく、"変革"が求められるわけです。
それでは、"変革"は、BPRで登場した"改革"と何が違うのでしょうか?
厳密に完全に分けられるわけではないですが、"変革"は、形態、性質、外観などを著しく変化させ新しくすることであり、"改革"は、基盤は維持しつつ、社会制度や機構・組織などをあらため変えることです。よって、DXの"変革"は、BPRの"改革"を更に推し進めた発展形として、根本から変えてしまい従来の慣習ややり方にこだわらなくてよいのです。
とはいえ、業務システムは、何でも壊して作り直せばよいというものでもありません。それが必要かどうかは、現状の把握は必須であり、そのためには、業務プロセスの可視化や、問題点の洗い出しなどが必要となり、DXを目指すにもBPRの実施手順は重要となります。
よって、夢のあるDXを見据えて、まずはBPRを数多く実践して、少しづつでも成功事例を増やして行くことが、DX実現のための現実的な方法であるといえます。
BPRへのチャレンジが、DXの具現化を加速する