Web3.0によって生み出される未来は、ブロックチェーンの分散型ネットワークによって、取引した履歴なども暗号化され改ざんできなくなり、堅牢なセキュリティが期待されています。
しかしながら、本当にそれでセキュリティリスクは軽減されるのでしょうか?
Web3.0の最大のメリットの一つが、中央集権的な管理が不要になることで、インターネット上で市場を牛耳っているGAFAなどのプラットフォーマーに頼らなくても、P2Pで企業とユーザが直接通信の取引が可能になることです。物々交換のように個人レベルでダイレクトにWeb取引ができるようになれば、本来構造的に仕方なく支払っていた仲介料など間接コストが要らなくなります。
これらは、たしかに理論上は理解できますが、本当にプラットフォーマーや仲介する業者が要らない世界がやってくるのでしょうか?。
世界規模の巨大企業となったプラットフォーマーに依存していると、見えないところで彼らの企業利益に基づく情報統制が行われて、知らず知らずマインドコントロールされてしまっている危険が潜んでいます。確かに、あれだけ巨大な利益が出ていることを考えると、少なからずどこかで中間マージン的なものが搾取されていることは推測できますが、それでも、過去に比べればプラットフォーマーのおかげで生活が便利で豊かになった実感があります。よって、そのメリットを投げ捨て、すべて自己責任で取引をするような世界に移行していくとは少し考えづらいです。
たとえば、ビットコインなど特定のブロックチェーンの仮想通貨を使えば、管理者不在でもすでにネット上で直接取引ができますが、今後それをどれぐらいの割合の人が理解して使用するようになるでしょうか?問題は、ブロックチェーンの仕組みが、専門家でない限り一般の人には理解できないし、仮想通貨の送金先の入力ミスをした場合など何か問題があった時、誰に頼ったらよいのかが分かりません。
人は利便性を求めるのと同時に、安全であることを重要視します。そのためには、少々コストがかかってでも、安心できることを優先します。
Web3.0での代表例として取りざたされているNFTは、デジタルデータをブロックチェーンの技術によって改ざんできなくすることで、デジタルデータに資産価値を持たせることを可能にしました。しかも、2次販売されても手数料が入るようにするなど、さまざまなプログラムを組み込むことさえできます。これにより、個人でも大企業に匹敵するような売上をあげることも現実になってきました。一方で、改ざんできなくなったとはいえ、所詮デジタルデータであるためネットワーク越しに盗まれたり破壊されないように、その保管についても自己責任で完璧に行わなければなりません。こうしたことから、NFTについても暗号資産である仮想通貨で既に何度か騒がれているように、詐欺にあったり、ハッキングによって盗まれるような事態も今後一層増えてくることが想定されます。
世間では、一部の人間による中央集権的な管理が貧富の差を拡大しているなどとして良くないことと決めつけ、管理者を置かず誰もが平等に使用できる仕組みの方が正しいとする風潮がありますが、これがかえってリスクを軽視させているように思えます。一般常識と呼ばれるような考え方は、時代によって変化するものであるので、どちらか一方に偏ってしまうのは仕方がないのかもしれませんが、セキュリティリスクについても自己責任で個人やその企業任せになると、ITリテラシーが低い人たちが、計り知れないリスクを負うことになりかねません。
理想は権限や権力社会に依存しないフラットな世界なのですが、実状はそうした権力構造のおかげで集中的な一元管理ができ安心に繋がっていることも事実でしょう。
Web3.0では、分散管理のメリットと自己責任のリスク