PCの操作ログによる勤怠管理


労働基準法により、企業には勤怠管理を行う義務があり、それはテレワークを実施する場合でも例外ではありません。
会社への出社、退社時にタイムカードによる打刻で労働時間の把握を行っていた場合には、まわりの目もあり、不正に対する抑止力がありました。しかしながら、テレワークをするケースが増えてくると、在宅勤務でも労働時間を把握するためには、タイムカードで収集していた勤務時間を、PCのログから取得するPCの使用時間へ置き換えようと誰もが考えますが、誰も見ていないところでは、簡単に不正ができてしまい不安が残ります。
それでは、勤怠管理用にPCの操作ログを取得する必要はないのでしょうか?

もちろん、PCの使用時間がそのまま労働時間とイコールではないのですが、自己申告された勤務時間帯の信憑性があるかどうかチェックをするためにも、PCの操作ログはとても有効です。事実、事業主向けの厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」には、講ずべき措置として、”タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること”と明記されており、PCの使用時間が客観的な記録方法の一つとして出てきます。つまり、在宅勤務を想定した場合、タイムカードは出社時に使用するもので、家でICカードで入退出管理をしているとは考えにくいので、PCの使用時間の把握が講ずべき必要な措置に該当することになります。そして、”やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合であっても、入退場記録やPCの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること”とあるため、PCの使用時間を把握するために、自己申告とは別に、客観的な記録としてテレワーク時のPCの操作ログを収集することは、ほぼ必須条件だと言えます。
たとえば、Windowsであれば、イベントビューアーを表示して、Winwdosログのシステムについて、イベントIDで、"7001"と"7002"のフィルタをかければ、PCの起動と終了の日時が把握できます。とはいえ、テレワーク従事者にPCの操作ログを集計して報告させるのは、手間であるし、改ざんの心配もあるため、この辺りは、ログ管理システムに自動収集させて、一元管理する方が企業としては安心でしょう。また、Windowsが取得しているログの種類はたくさんあり、保存先のローカルディスクの容量にも制限があるため、一般的には数カ月分しかデータが残っていません。こうしたことから、ログ管理システムのような仕組みは必要だといえます。

PCのログオン、ログオフの情報だけであれば、無料ツールでも収集や集計ができますが、実際にどんな業務アプリを使用していたかとか、メール送受信の状況などとも照らし合わせたい場合はやはり、そういった機能を備えたログ管理システムに任せた方が簡単です。パッケージソフトのログ管理システムによっては、メジャーな勤怠管理システムと連動しているものも多くなってきたので、労働時間や、時間外労働の実態を把握するには適任でしょう。
通常の勤怠管理のためのPCの使用時間としては、ログオン、ログオフの時刻を管理していればよいのですが、その時間と申告されたテレワークでの労働時間との間に著しい乖離がある場合には、実態調査をする必要があり、その際、PCの使用時間帯に具体的にどのような業務を行っていたのかを検証するためには、他の種類のログも必要になります。最低限、PCの電源が入っていても、どの時間帯がアクティブな状態で使用されていたのかどうかは分かる仕組みがないと、実態調査のエビデンスとしては不足してしまいます。
申告時間との乖離は、すべてが労働時間の水増しのケースばかりでなく、働き過ぎの人の過少申告の場合もあります。そのため、ツールによっては、規定した時刻になれば、強制的にログオフさせる機能や、一定量を超えるPC操作を行っている場合、過剰労働の警告を自動的に表示するツールなどもあります。

テレワークが普及しだしてまだそんなに年数が経っていないため、どのような管理がベストなのか流動的です。もしもPCの使用時間が労働時間として勤怠管理の基準になっていくと、PCを操作してさえいたらお金がもらえるという風潮になりいくらでもズルができてしまうため、今後はアウトプットで判断する成果主義の労働が主流になっていくものと考えられます。そうすれば、成果物を早くたくさん量産するために、現場でもRPAの自動化やAIが活発に活用され、DXも推進されていくのかもしれません。


テレワーク中のPCの使用時間の把握は、講ずべき措置


操作ログ, 勤怠管理