AIによるレコメンドのメリットとデメリット


若者を中心に大手メディアのテレビ放送を見ない人達が増え、YouTubeを中心にテレビよりも他の動画視聴サービスを利用している人が圧倒的に増えてきました。その理由は、動画がスマホで素人でも簡単に作成できて、気軽に公開できるほど一般的になり、コンテンツの量も質も向上し、テレビがなくても、スマホやタブレットで視聴できる利便性が向上したことなどがあげられます。現在では、ほとんどのテレビでYouTubeなどのインターネットで提供される動画が視聴できるようになり、テレビ放送を十分代替できる環境も整ってきました。

テレビ放送では実現できなかった機能に、おすすめ動画を表示するAIによるレコメンド機能があります。YouTubeを例にとると、自動再生機能をオンにしておけば、まるでテレビ放送のように連続して動画が再生され続け、その再生動画の選択はAIが視聴者の趣味嗜好に合わせて勝手にレコメンドしてくれます。最近では、Googleで検索したキーワードに関連する動画なども、おすすめ一覧に入ってくるため、そこまで情報が連動しているのかと驚くばかりです。YouTubeが公開している情報によれば、おすすめ動画システムは絶え間なく進化していて、シグナルと呼ばれる800億件以上もの情報から日々学習しているようです。2008年当初は、動画の人気ランキングがベースだったのに、その後、マシンラーニングの力を借りて、個人の動画再生時間などを加味しておすすめを選ぶよう進化してきました。今では、クリック数、総再生時間、アンケートへの回答、共有、高評価、低評価など、いくつかのシグナルが相互に作用して、ユーザの満足度をシステムに伝えて、YouTube独自のアルゴリズムによっておすすめが自動的に表示されるようになっています。YouTubeでは、おすすめ動画システムの基礎になっているのは、ユーザが見たいと思い、価値を得られる動画を、見つけてもらいやすくするというシンプルな原則によるとしているので、そのための進化だとすれば歓迎すべき内容です。現在は、YouTubeの7割以上がこのAIのレコメンドに誘発された視聴らしいので、これがユーザにどれだけ受け入れられているかが分かります。ユーザはわざわざおすすめ動画を見に行っているわけでばないのに、まさしくそのユーザが好きそうなタイトルのサムネールが表示されるため、思わずクリックしてしまうのでしょう。

このAIによるレコメンドによって、個人の嗜好に合った知的好奇心を掻き立てられ、ユーザが喜ぶ情報を手軽に入手できるようになることは、大きなメリットです。しかしながら、自分の趣味嗜好に合った情報ばかりを視聴していると、その世界が常識となり、偏った考え方に染まったり、他の嗜好の人との壁ができたりします。そうして、考え方の幅が狭くなったり、世の中に偏見を持つようになってしまっては、このレコメンド機能が悪い方へ作用してしまいます。また、信頼のおけるコンテンツかどうかの判断による選別も、YouTube側のガイドラインに沿って行われているので、悪くいえばYouTubeで視聴できる内容のみが正義かのように洗脳される危険もあります。その際、広告主からの資金量に応じてこのレコメンドも決められているとしたら、この洗脳による影響は決してユーザにとって良いことばかりとは言えません。

AIが活躍する場面では、その多くが利便性を高め、ユーザにとってはメリットも多いですが、それを利用する側もその機能に依存しすぎると、気づいたときには自身にとって不都合や、不利益になることもあります。それを理解して、受け身で利用するのみではなく、主体性をもって偏った嗜好にならないように活用すべきです。


AIのレコメンドは、洗脳に気を付けるべき


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