ユーザのニーズが満たされていなかったり、システム化の目的が不明瞭だったりなど、業務システムの品質問題の原因の多くは、要件定義にあるといわれています。
業務プロセス改革を行うには、複雑化した既存システムのすべての仕様を明確にし、あらためてこの要件定義を行うことがとても重要です。要件定義には、当然ながらシステム化要求定義のみならず、ビジネス要求定義も含まれます。
業務プロセスをITによってシステム化することにより、口頭や紙文章で行っていた作業を、システムに置き換えたり、それによって効率化する従来のステージでは、要求事項がシステム化できるかどうかを中心に考えれば、必ずしも要件定義はそれほど難しいものでありませんでした。しかしながら、DXで求められるデジタル時代に対応した新たなビジネスモデルの構築を必要とする競争力強化のステージでは、ITを業績の向上や競争力強化に活用するための要件定義が必要になり、決して簡単な作業ではありません。
レガシーシステムの再構築によって業務プロセス改革を進める場合の要件定義においても、まずは既存システムの仕様を理解することから始めます。現行システムの仕様書や業務フローを再確認し、ドキュメントが残っていなければツールを活用して可視化します。現行業務の担当者や、当時の開発者から再学習することも可視化をするのに有効な手段です。但し、この時マイグレーション手法のリホストやリライトが決して最終目的ではなく、現行踏襲のために要件定義を行うわけではないことを共通認識する必要があります。現状の仕様が確認できれば、当然改善したい課題や、問題点も多く浮彫になりそれを解決するための課題管理表の作成も重要になりますが、その問題解決だけでは十分な要件を満たしておりません。必要なのは、ビジネスモデルを変えるほどの、業務プロセスの変革です。最新のIT技術を取り入れ、既存のシステムの仕様に縛られることなく自由な発想を取り入れることを前提として、要件定義をおこなっていくことが必要です。
その実現のためには、システム開発はシステム部門の仕事という偏った考え方を捨て、経営層の積極的な参画が必要となります。システム部門だけでは業務を十分に理解していないため、業務部門も当然参加が必要ですが、現場の視点では無駄の改善や、効率化の改善レベルにとどまってしまいます。経営層が主体的にビジネス構想やシステム構想を創造する立場で参画していないと、大胆な業務改革や組織改革は断行できずデジタル時代に対応した新たなビジネスモデルの構築が実現できません。再構築を任されたメンバーも、経営側が何を目標にしているか認識できないと、経営が期待する要件定義をおこなうことができません。このシステム再構築によって具体的な数値レベルで目標が明確化できれば、システム更改後の評価も可能になるため、経営企画の立場の企画メンバーも参画することが望ましいです。
システム再構築の要件定義には、経営層の積極的な参画が必要