DXの推進が思うように進んでいない企業が、残念ながら数多く存在しています。
DX推進に費やす時間やリソースがなかなか確保できないでいたり、あるいは、トップダウンの指示によりDXのプロジェクトが大きすぎるため思うように進んでいないなど、その大半は、DX実施に前向きに取り組む姿勢はあるものの、DX実現の現実的な目途がまだたっていないようです。
DXへの取り組みは、単なる業務システムの修正ではなく、今まで存在しなかったような新しいシステムを目指し、ある意味未知への挑戦となるため、現状からの変化を躊躇してしまう傾向があります。それを回避するためには、BPRの本質である「リエンジニアリング作業:自動化しない、抹消する」をスモールスタートで実践することが得策です。とういのも、現状を把握して、問題点を洗い出し、それを改善する通常のパターンでは、現行システムの否定から入ることが難しいからです。ITを活用して、組織やビジネスモデルの変革まで求めるDXにとっては、今までのシステムを否定し破壊して、新たに創造するぐらいの大胆さが必要です。
そのためにも、スモールスタートによる、DXの成功体験がとても重要です。実績の積み重ねが、より効果の大きいDXを現実化し加速します。但し、スモールスタートだからといって、単なるシステムの部分的な改善では十分でなく、従来のシステムを全く新しいものに刷新することが効果的です。
今まで常識と考えていた従来の業務フローを、今では時代遅れの非常識ではないかと考えなおし、現代のトレンドをリサーチして、まずは自分たちが挑戦できていなかった分野にチャレンジしてみることが大切です。つまり、最初からオリジナルの大々的な変革は狙わず、まずは他社の成功事例を参考にして実現しやすいテーマから実践してみるのです。
たとえば、コロナ禍によって話題になった「脱ハンコ宣言」です。なぜ、ハンコを押すためにわざわざ出社しなければならないのか?本当に、ハンコは必要なのか?従来当たり前に思われていた常識を疑ってみて、それを否定してみることから始めます。
具体的には、実際のハンコの代わりに電子印鑑を使用した電子契約システムです。ハンコイメージの図柄を書類データに上書きし、PC上で押印できるようにしたものは、出社をしなくていいなどそれなりに効果があるのですが、これでは、従来のやり方を否定していることにはなりません。
たとえば、現在効果が高いクラウド型の電子契約サービスは、印鑑を押すこと自体を必須とせず、電子化により印紙も無くし、紙で保管することも無くし、クラウド上にデータ保存して会社内の保管スペースも不要にします。これは、注文書や、請求書などに本当に押印が必要なのか?という、否定が効果となって現れています。紙で保管する必要性を否定すれば、権限を持った人だけが、電子化により書類をリモートでも閲覧でき、キーワードで検索できるようになります。
一歩進めて、従来の押印のための承認手順も否定すれば、承認のためのワークフローも電子契約と連動することにより、タイムスタンプが追加された承認ログにより、形骸化されていためくら判を排除でき、責任ある人によるスピィーディな契約手続きが可能になります。
DXも理想を追い求めるばかりでは、時間ばかりが過ぎていきます。まずは、既に他社で実績があるIT技術が活かされたサービスを使ったスモールスタートから業務変革を行い、成功体験が増えれば、それだけ効果も積み重なって会社への大きな貢献となります。ポイントは、従来のシステムの一部修正による業務改善ではなく、小規模でも常識を打ち破るようなDXから始め、経験とともに変革ののスピードを上げて他社を圧倒するDXの実現を目指すことです。
電子契約のような、今までの常識を変えるスモールスタートがDX成功のカギ