プロセスという名の付加価値


同業他社との競争でビジネスに打ち勝つには、何か付加価値などによる差別化が必要です。そのためには、その企業が取り扱う商品やサービスに対し明らかにわかる価格差であったり、機能面における優位性であったり、最終のアウトプットを他社よりどれだけ魅力的にするかがカギでした。

しかしながら、全業種に多くの会社がうごめきあう厳しい競争の中で、自社製品で他社を圧倒するような優位性を訴えることは簡単ではありません。
従来の宣伝方法であるテレビ広告は、数十秒内にPRしなければならず、短時間に自社の商品やサービスの安さや品質の良さをアピールすればするほど、それは売り手の主観だと冷めてみられてしまう傾向が出てきており、広告に飽き飽きした消費者は、若者を中心にテレビ離れが進んでいます。
テレビなどの従来のマスメディアに頼らない人達も、ネット上で閲覧できる明らかに宣伝とわかるSNS上の書き込みなどは毛嫌いします。そして、はじめは目新しかったGoogleなどのレコメンド広告を、誰もがうっとうしいと感じ始めています。

それでは、どうやって他社との差別化を客先に伝えればよいのでしょうか?
ITを活用したとしても最終アウトプットである商品やサービスは、差別化しづらいものも多いため、DXBPRを実践する時に、プロセスに対して意味づけをするのです。
たとえば、ネットで評判の野菜農家は、生産方法をWeb掲載して、生産者のこだわりがうまく伝われば、値段が高くても注文が入ります。また、値段の差異ではワインの味の違いが分かる人が多くなくても、誰かに話したくなるようなうんちくのあるワインは高値で取引されます。
つまり、DXを推進するときに、プロセスレベルで他社との差別化を図ることができれば、それを客先に共感させることにより、安心感を与え、信頼を得ることが期待できます。それにより、顧客に満足感を与え、リピート購入の可能性も高まるかもしれません。

プロセスへの意味づけのポイントは、「共感」です。
IT活用の多くの目的は、業務プロセスの効率化、あるいは生産性の向上ですが、そうしたノウハウや活用事例はネット検索でも多くが入手可能なため、他社との差別化が難しくなってきています。マイクロサービスが流行り、クラウドで優良な単一目的のサービスが多くなると、それを活用して進めるDXBPRでは、どの会社も採用を試みるため、なおさら差別化がしづらくなります。
それゆえ、効率化以外に万人受けを狙わなくても、特定人々に共感されるような「こだわり」を感じられるプロセスが求められます。
そのためには、決して効率的ではないと思われるプロセスについても、企業の特長やこだわりを採算を度外視して徹底的に取り入れる覚悟が必要です。
たとえば、有機栽培のように一見無駄に思えるプロセスも、客先に真意が伝われば、「共感」を呼び、客先から見た価値が上がります。DXを意図しているのであれば、ITを利用しているからこそ、長年のビッグデータからその企業がこだわっているノウハウを結集し、他社には真似できない特別な品質管理を行っていることなどをアピールできたら良いでしょう。
あるいは、なぜその製法にこだわっているのか、プロセスをストーリーで表現しりすることも有効です。
WebサイトやYouTubeなどの動画サービスを使えば、従来の製品PRとは別に、その商品やサービスの製造工程や、他者とは違うプロセスの中身など、不特定多数の人にその企業がこだわっている部分に共感してくれる人に伝えることが可能です。
そして、秀逸なプロセスは、その部分を切り出して、それを販売やサービス化することにより収益化することが可能かもしれません。
一部の人にしか伝わらないこだわりであっても、共感を得たユーザには、コミュニティのような世界が広がり、その仲間が固定客になる可能性もあります。

こうした理由により、業務プロセスの改革を進める場合、そのプロセスは、コスト重視の効率化の視点ばかりでなく、プロセスに付加価値を加えることを目的として変化を求めるのも、他者との差別化を図る意図ではとても重要になります。


「共感」を呼ぶこだわりで、業務プロセスに意味づけする


DX,BPR