税務調査を受けた時などに必要となる、契約書に代表される取引が成立したことを立証するための書類である証憑には、取引先名や取引日時、取引金額などを証明するための資料として、請求書や、領収書、納品書など多くの種類の書類があります。抜本的に見直され改正された電子帳簿保存法では、電子取引について電子データのまま電磁記録することを義務化しました。2年の猶予期間で既に施行されているこの改正された法律は、罰則の重加算税も強化され、法に基づいた保存要件を満たしていないと、エビデンスとしての書類として扱ってもらえないリスクがあります。
保存要件には、タイムスタンプの付与や、履歴が残るシステムでの授受・保存といった方法などで、改ざん防止のための措置をとることがあります。加えて、取引日付、取引⾦額、取引先で検索できるようにする必要があります。そうなると、今までEメールにて受け取っていた請求書や納品書をプリントして保管する運用をしていた企業は、そもそも業務のプロセスから見直されなければなりません。
たとえば、タクシーの領収書を例にとると、改正前は、タクシー精算をしたい人が、その領収書に自署つまり手書きでサインして、3営業日以内のタイムスタンプ付与することが必要でした。ですが、令和4年1月1日からの改正された電子帳簿保存法では、自署は不要となり、保存するまでの期間が最長2カ月に延長されました。加えて、クラウドサービスなどを利用して、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与の代わりにすることができるようになりました。他にも、検索条件なども緩和され、推奨から義務になった電子化によるペーパーレスの運用は、以前より導入し易い内容になってきました。改ざんリスクを考慮して厳しい条件だった以前の要件は、セキュリティの確保と利便性とのバランスを考慮して、積極的な移行推進への見直しが行われたようです。
こうなると、はじめから電子帳簿保存法の内容を知っている人も、改正内容を確認し、それぞれの書類について保存要件に合致した保存方法が行われているかを現状把握して、対応策を検討する必要があります。日々の業務を行っている中で、書類保管の運用を変えることはもちろん簡単なことではありません。しかし、それが実現できると、ペーパーレスにより、書類保管スペースの削減や、書類を探すときの手間など管理面でたくさんの恩恵を
受けることができます。テレワークで書類の回収の手間が問題視されている近年の環境変化もあるため、早急に証憑書類についてもパーパーレス化のために、電子契約サービスなどの利用も検討するのが良いかもしれません。クラウドでサービス提供されているほとんどの電子契約サービスや、会計サービスでは、書類の保存について必要な操作の履歴が自動的に記録されるため、タイムスタンプ付与を自身で考慮する必要がなくなります。しかも、検索要件も満たしています。改ざん防止のための措置も第三者の運用に任せられるので、これで、電子取引の保存要件を満たせるのであれば運用負荷を格段に減らすことができます。
法改正により、Eメールやインターネット環境を利用した電子取引では、電磁記録をすることは企業活動を行っていれば避けられない義務となりました。このように、どうしても電子データで保存をする運用へ変更しなければいけないのであれば、早めに対処して、積極的にメリットを享受する行動に移ることが、現時点で一番必要だと思われます。
電子取引では電子データでの電磁的記録の保存が必須