ログとして記録したデータが、もし改ざんされてしまったら、過去の出来事を事実と違う内容に塗り替えられてしまうことになります。残念ながら、人の手によって作成された記録は、基本的には人の意思によって書き換えが可能です。古い書物によって私たちが信じてきた過去の歴史も、あらたに発見される過去の事実に基づく証拠によって、間違っていたことを証明されるケースは多々あります。
記録したデータを改ざんできなくする仕組みは、書き換え不能なデバイスに記録するなど、ハードウェアに依存するものはたくさんあります。一方、ソフトウェアの仕組みとして、今一番期待されているのは、やはりブロックチェーンの技術でしょう。
ブロックチェーンは、ビットコインをはじめとする暗号通貨で有名になりましたが、この改ざんできない台帳のシステムは、あらゆる記録すべきデータに応用がききます。
ブロックチェーンは、改ざんできなくするという防御の技術というよりは、あらゆるすべての動きを強制的に記録して、それを隠蔽できなくしている技術だといえます。通常であれば、ロギングしているサーバは、冗長化されていても2台程度で動作しているためそのサーバで動く処理を変更してしまえば、ログの改ざんが可能です。しかしながら、ブロックチェーンは、複数のコンピュータで台帳にあたるログを全く同様の正当な手続きの処理によって記録し、すべての記録するコンピュータで同じ内容のデータを保持します。これにより、誰かがどこかのコンピュータのデータを改ざんしても、他のコンピュータとの整合性が保てないため、改ざんのログが残り、記録したオリジナルのデータは変更されません。そのため、ブロックチェーンを作成する不特定多数のコンピュータは、ネットワークに繋がれ分散して、どのコンピュータが処理しているのか知られないようにします。手法によって違いますが、たとえば、ビットコイン等は、マインニングと呼ばれるブロックチェーンを構成するためのある計算によってトランザクションが承認され、その計算によって競い合わせて報酬を与える仕組みによって、不特定多数のコンピュータに処理を任せています。ビットコインであっても、理論上は、そのマイニングを行うコンピュータの51%以上を制御できれば、不正が可能ですが、過去のトランザクション処理をすべて書き換える処理能力は現実的ではないため、リスクは少ないと言われています。
ブロックチェーンの魅力は、なんといっても中央の集中管理ではないため、一部の管理者の特権を使った不正ができない仕組みです。過去のトランザクションのログは、基本的には書き換えることも消すこともできません。本来、事実は捻じ曲げることができないものです。起こった事象のすべてを漏れなくありのままに記録し、消去も改ざんもできない仕組みが当たり前になれば、ビジネスの世界では大きく可能性が広がります。こうなると、ログ管理においても、改ざんできない仕組みとして、ブロックチェーンはこれからも注目すべき重要な技術となっていくでしょう。
ブロックチェーンは事実を改ざんできない