ITモダナイゼーションとDXの関係


モダナイゼーション(modernization)は、近代化を意味する言葉ですが、ネットで検索するかぎり、「モダナイゼーション」という単語は、多くのWebページにて既存のITシステムを新しく再構築することの意図で使用されており、日本ではIT用語として定着してきているように感じられます。

海外を含め「modernization」という単語を英文字で検索すると、やはり農耕社会から産業社会への転換など近代化という言葉の意味が解説されているだけで、単独の言葉でITシステムの再構築の意味へは結びつかないようです。そのためか、国内のWebページでも「ITモダナイゼーション」というITと組み合わせた言葉を、使用しているのが散見されます。この言葉の方が、とてもしっくりくるのですが、IT Modernizationに似た言葉で、「Digital Modernization」というワードが、海外のサイトでは、ITの分野で多く見られます。その中には、Legacy Modernization、IT Modernization、Application Modernizationなどのビジネス要件に応じたモダナイゼーションが、Digital Modernizationには含まれる場合がある、という考え方もあるようです。
いずれにしても、IT分野においては、modernizationを使った言葉の多くはレガシーとなった従来の時代遅れのシステムを刷新する場合に使用されているようですが、migration(マイグレーション)という言葉が、老朽化したシステムからそのままのプロセスで別の環境の新しいシステムに乗せ換えるイメージだったものが、不要部分を見直し、セキュリティを強化するなど、運用効率や生産性の向上なども考慮して改善するイメージがmodernizationにはあるため、レガシーシステムの再構築にはmodernizationという言葉の方が前向きなイメージを与えるようです。
要件を細分化してしまうと、IT Infrastructure Modernizationのような言葉も出てきますので、総称して使用するのであればやはり、国内では「ITモダナイゼーション」という言葉がよいと感じられます。「デジタルモダナイゼーション」という言葉では残念ながら、日本では馴染みが無いようで、「ITモダナイゼーション」の方が分野も絞られ、言葉も短いため使用されているサイトも多いです。

そうなると、ITモダナイゼーションは、DX(デジタルトランスフォーメーション)と何が違うのかが気になりますが、このふたつは決して相反するものではありません。
DXが、デジタル化技術によって、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するために、業務そのものやプロセス、企業文化までも改革してビジネス競争に打ち勝つという壮大な目的を意図しているのに対し、ITモダナイゼーションは、時代遅れの既存システムを刷新することによる業務の効率化や生産性向上、運用費用削減など事業継続のための保守的な目的が、背景となっています。
もちろん、ITモダナイゼーションによって、業務改革まで影響することはありますが、古いシステムのままでは、不都合もあり非効率なので切羽詰まって実施するパターンが多いです。だからこそ、既存システムの延長で考えられていることがほとんどで、DXで注目されているAIやIoTなどの最新技術を取り入れることは二の次で、まずは、既存の業務システムと同等のプロセスでマイグレーションされることが一般的です。
マイグレーションの手法には、リライトやリホスト、リファクタリングなどがありますが、折角時間とコストをかけて行うので、戦略を立て、既存システムの問題点を改善し、可能な限り効率的で生産性の高いシステムへ置き換えることが望まれます。

要するに、現行のシステム環境をバージョンアップするだけに留まらす、業務プロセス改革を行うように、既存システムの否定から入り、最新のIT技術を駆使して全く新しい発想で業務フローから見直し、作り直すことによるリプレースが理想です。それができれば、ITモダナイゼーションの実践の積み重ねが、DXの実現へと通じていくことになっていきます。


ITモダナイゼーションで、DXを目指す


ITモダナイゼーション, DX